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日々徒然ときどきSS、のち散文
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2003/02/16(日)
[SS・ミスフル]欠けた爪と魚の夢(猿。相手はご自由に★)



 ざあざあざあ。

 しとしとしと。

 降り止まぬ、雨の音。

 やまない、水音。

 魚になれるかな。



   
欠けた爪と魚の夢



 朝から雨だった。


 天国は昔から雨があまり好きではなくて。
 その理由はただ単に出歩くのが面倒になるから、なのだけれど。



 朝起きて、適当にだらだら過ごして。
 ベッドにもたれかかりながら雑誌を読んでいたら、いつのまにか寝入ってしまっていたらしい。
 おかしな体勢で寝ていたせいか、首が痺れるように痛かった。
「んん……」
 手を当て、首をゆっくり回す。

 と。

 ぱさり、と音がして。
 なんだろう、と寝起きでぼんやりする頭のまま音のした方に目をやると自分にかけられていた毛布が落ちた音だったらしい。

 ああ、毛布かけてくれたんだ、とか。
 俺寝てばっかだけど退屈してねーかな、とか。
 そんなことを考えて、けれど睡魔にとろとろと眠りの世界に誘われる。
 欠伸をしながら、もう一眠りするかと毛布を引っ張り上げようとして。

「…………」

 自分の隣り、同じようにベッドにもたれかかって眠っているその人を見つけてしまった。
 一瞬動きが止まり、すぐに呆れたような困ったような、けれど嬉しいようななんとも複雑な表情になる。
 なーんでこんなトコで寝ちゃってるかなぁー。
 ま、俺もなんだけど。
 くすくす笑いながら、もう一度小さくあくびをして。

 毛布を持って、少しだけその人と自分との距離を詰める。
 それから、多分その人が自分にそうしてくれたように毛布をかけた。
 但し、自分とその人、両方に。

 ふわりと、暖かくなったのは、多分、心。

 まだ雨は止まない。
 窓の外からは水音が聞こえ続けている。
 このまま雨が降り続ければ、魚にでもなれちゃいそうだ。

 とりとめのないことを考えながら、目を伏せる。
 起きたら、爪を切らなきゃ、と。欠けてしまったせいで、ざらざらする感のある右手親指の爪に何となく触れて。
 天国は眠りにおちた。



 窓の外では、雨の音。



END







◆言い訳◆
わーい、短くできた★
そんなこんなで埼玉県、雨でした小話。
雨はそんなに好きじゃないけど、雨音を聞いているのは好き。

今日友人宅からの帰りに見た空と雲と月が綺麗でした。
雲が生き物みたいで思わず「竜の背骨みたいだね」と呟いてたりして。
一瞬の感覚で出てきた言葉なので、直感的にそう思ったらしいです。
竜の背骨みたいな雲が、月に向かって伸びてました。
それまで雨で雲ってたのに、晴れた空が、月が見れたのがなんだかすごく嬉しかった。
竜が雨を追いやって、月に向かって飛んで行くようにも見えました。

ただ「綺麗だな」でもきっと充分すぎるんだけれども。
そういう光景が「見える」あたしは、それが見えない人に比べてきっとずっと嬉しい思いをできたりするんだろうなと。
そういうものが「見える」のがなんだかとても嬉しかったのでした。