日々徒然ときどきSS、のち散文
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2002/06/23(日)
SS・ワンピ]ラヴ・ゴースト・デス・パニック 《中編》(パラレル/サンル)




「アンタ誰?」

 黒曜石みたいな目をまっすぐに向けて。

 物怖じしないその態度に、興味が湧いた。

 サイレンの音が、先程よりも近づいてきていた。


  
ラヴ・ゴースト・デス・パニック
    
(LOVE・GHOST・DEATH・PANIC)



「なあ? 俺、ジコショーカイ、ちゃんとしたろ? そっちも教えてくれよ」
 言いながらルフィは金髪碧眼の顔を覗き込む。
 金髪碧眼は何故か苦い表情をして、少したじろいだ。
 ルフィがそれに訝しげに眉を寄せると、金髪碧眼はふう、と溜め息をつき。
「俺は、サンジ。死神だ」
「し、にがみ…?」
「ああ、死神。これでもお前の軽く五倍は生きてんだからな?」
 だから失礼な態度取るんじゃねぇぞ、と言外にサンジは言っているらしかった。
 けれどルフィがそれに気付くはずはなく。
「五倍ぃっ?! 嘘だろ、だって俺とそんな変わらなく見えるぞ?!」
「うっせぇ! 死んで落ち込んでたり、自分が死んだことに慌ててたりしてるトコにジジイやババァが来てみろ、余計落ち込むだろーがよ!」
「……そーいうもんか?」
「そーいうもんなんだよ! お前がさっき言った悪魔だの天使だのも、大抵は実年齢に伴わない外見してんだろーが」
「あー……」
 言われた言葉に納得しているんだかしていないんだか判断のしづらい返事をして、ルフィは曖昧に頷く。

「でも俺、別にどーでもいいけど」
「お前の美醜感覚はどーなってんだ……?」
「なあなあ、若く見えるってことはさ、実年齢に伴った外見にもなれんのか?」
「人の話を聞けよ、お前」
「いーじゃん、面白ぇ! なぁ、実年齢っていく…」
「だああ!! いーからその話題は終わり! つーかこういう役目は俺みたいな美男子か、それじゃなきゃカワイ子ちゃんが来るのがセオリーなんだよ! 理屈も理由もなし! 分かったか?」
 捲し立てられ、今度はルフィがたじろぐ。
 あまりの剣幕に、年齢のことは禁句なのかな、と判断する。
「わ、分かった」
 ルフィがこくりと頷くのを見たサンジは、それでよし、とばかりに腕を組んだ。

「で、俺これからどーなんだ?」
 サイレンの音が、ますます大きくなった。
 音の方をルフィが見やると、救急車が赤いランプをくるくると点滅させながら事故現場に向かってくるのが見えた。
 ぼけっとそれを見ていると、サンジが横で溜め息を吐くのが聞こえ。
「何? 何か問題あるのか? 別に俺、これからどうなろうと文句言ったりしねーぞ?」
 別に暴れたりしないしさ、とルフィはあっけらかんと言い放つ。
 最初こそ自分が置かれている状況に驚きはしたが、なってしまったものは仕方ないと思うし、それを受け入れるべきだとルフィは思っていた。
 けれどルフィの言葉を耳にしたサンジは、ますます渋面を深くし。
「それ以前の問題なんだよ、バカ」
「……?」
 事情が分からないルフィは、サンジの言葉にただ首を傾げるしかない。
 サンジが言い淀んでいる気配を察し、ルフィは未だ倒れたままの自分の体を見下ろした。
 救急車から下りてきた救急隊員が、ぐったりと動かない体を担架に乗せて運んでいく。
 あー……俺はここにいるんだけどなー。
 聞こえるはずも見えるはずもないから、心の中でだけそう呟いて。

 そうこうしているうちに救急車は扉を閉めて、来た時と同じようにサイレンの音を響かせながら走り去ってしまった。
 赤いランプが遠退いていくのを見ながら、ルフィはまだ横で渋面のままでいるサンジの様子をこっそりうかがう。
「どうでもいいけどさ、いつまでココにいるんだよ? さっさと行こうって。俺、現実逃避するタイプじゃないってば」
「人の気も知らねーでさっきからコイツは……っ」
 ルフィの言葉に額を押さえたサンジが、そう呟く。
 なーなー、などと言いながら顔を覗き込んで来るルフィは、まったくもって悩みなどとは無縁そうな平和そのものな表情をしていて。
 サンジは項垂れつつ、かしかしと頭をかいた。
「……ありがちで悪いんだけどさ、ねーんだよ」
「あ?」
「お前の行き場、決まってねーの。ていうか、お前が事故に遭うなんて予想外もいいとこだったってワケ」
「はあ?」
「俺が獲りに来た魂は、お前を轢いた車の運転手だったんだよ」
 寝耳に水、とはまさしくこのことだ。
 いやもう、ありがちと言われようと何だろうと、それに巻き込まれた本人にとっちゃ青天の霹靂でしかないわけで。

「ど、どういうことだよソレぇぇっ!!」

「耳元で喚くな、うるせぇ!」
 思わず叫んだルフィに、サンジは顔を顰めながら蹴りを入れる。
 だが今のルフィにとってそんなことは衝撃にもならない。
 がばりと起き上がったルフィは、がしっとサンジのスーツを掴んだ。そのまま揺さぶりそうな勢いで一気に捲し立てる。
「だってそれ、手違いで俺が死んだってことなんだろ? そりゃ確かに前方不注意だった俺が悪いって言われりゃそれまでなんだけど、でも予定になかった、まして行き場がないなんて言われっと、俺だってどーすりゃいいか分かんねーし。てーことは俺、見ず知らずの人間の身代わりで死んじまったってことかぁ……?」
 最初こそサンジの首をも絞めかねない勢いだったのが、段々意気消沈していきしまいにはぼそぼそと呟くような声音に変わってしまう。
 え、じゃぁ俺はもしかしてこれから浮遊霊ライフを送ってくことになんのか?
 あーでも浮遊霊"ライフ"ってのは言い回し違う気がすんなー。なんたって既に死んじまってるわけだし?
 そぉかー、浮遊霊……って好きな所行けんのか? 自縛霊とは違って未練とかがあるわけじゃなし、好き勝手にいろんな所行けそうだよな。
 そしたらタダで世界旅行とかできんじゃん。その気になりゃ宇宙旅行とかできっかも?
 あーでも全部見るだけかー、体ねぇんだもんな、それしかできねーよな。なーんだ、つまんねーのー。
 あ、でも待ってりゃそのうち行き場が決まるかもしんねーのか。
 ぶつぶつぶつぶつ。

 怒りと驚きが混じった顔で声を荒げたかと思えば、だんだん哀しげな表情になって落ち込んで、かと思ったら一人で何事かを呟き出す。
 ……おもしれー奴。見てて飽きねーっつーか。
 サンジは内心で呟き、未だ何事かを呟き続けるルフィをまじまじと見つめた。
 それこそ、ルフィが一番最初にサンジにそうしたように、つま先からてっぺんまで、だ。
 青いジーンズに、別段珍しくもないTシャツ。
 背丈はそう高くはないが、低くもない。ただ、手足の細さがやけに目に付いた。
 黒髪に、黒い瞳。人目を惹く顔立ち、とは決して言い切れないが、その瞳は意思の強さをしっかり現していた。

 しっかし……どーすっかね……





◆言い訳◆
 いや、むしろ
お前自身をどーすかねって感じだよ、金沢サン。
参りました、終わりませんでした。しかもイマイチギャグ何だかなんなんだか分からないです、この話。
書いた本人がそうなんだから、読まれる方はもっとそうなんじゃないかと予想されます。ゴメンナサイ(平謝り)。
しかもサンジ君が言うてますが、ありがちですよ、この展開。ヘソが茶を沸かす勢いです。思わずへっとか言って笑っちゃいましたよ(オイ)。
前、中、ときたので次は後ということで、次で終了ですな。おそらく。できれば。希望的観測としてはそうしたいです(曖昧)。
しかし前、中って微妙に文体違うっぽい気がするんですが…気のせいでしょうかね?
まぁいいや、ガンバロウ。この設定は書いてて楽しいv
しかし二人して完璧なまでに偽者だなー…あったまいったい(頭痛)わー…
こりゃもうまごうことなくサンジ君とルフィの姿借りただけのオリジナルっすね……