日々徒然ときどきSS、のち散文
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2002/06/22(土)
SS・ワンピ]ラヴ・ゴースト・デス・パニック 《前編》(パラレル/サンル)



 コレって……

 もしかして、もしかしなくとも。

「俺……死んだ?」

 意図せず口から洩れてしまった呟きに。

 ひやりと、背筋が冷たくなった。



   
ラヴ・ゴースト・デス・パニック
     
(LOVE・GHOST・DEATH・PANIC)



 何故だか知らないけれど、目覚めたら浮いていた。
 それこそ、ふわふわという形容詞がぴったり当てはまるようで。
 ルフィはきょろきょろと辺りを見回し、状況を把握しようとした。
 今、ルフィがいるのはおそらく地上から2〜3mと言った所か。
 真下には、倒れている自分の体。意識はないようでぐったりしているが、目立つ外傷は特になし。強いて言えば腕や足を擦りむいていることぐらいか。
 十数メートルほど離れた場所には、一台の乗用車。
 その車を運転していたであろう人物が、多分目撃者であろう誰かと何か話しているのが見えた。何だか物凄く慌てて混乱しているようで、見ていて少し気の毒だと思った。
 騒ぎを聞きつけてか、段々人が集まってきている。
 ルフィはそれを視界に入れながら、けれどすっかり混乱している思考をなんとか奮い立たせようと必死になっていた。 

 えっと、えっと……
 確か、今日は外せない講義があって、でも昨夜バイトで遅くなって疲れてたせいで寝坊して……

「……オイ」

 でも猛ダッシュすればギリギリ間に合うかって時間だったから、何も考えずに爆走してて……
「オイ」
「あ」
 朝からの出来事を順次思い起こしていったルフィは、ぽん、と手を打った。
 とにかく慌てていたから、近道しようといつもはあまり使わない路地を使ったのだ。
 けれどそれが仇となったらしく。
 路地を抜けてすぐの場所で、車とご対面。
「っオイ!」
 何がどうなってこうなってしまったのかはイマイチ分からない。
 けれど、さしものルフィも自分が事故にあったということは理解できた。
「あー……急がば回れってこういうこと言うんだろうな〜」
 呑気に呟き、ルフィはがしがしと頭をかいた。

「……人の話を聞きやがれ!!」

「うわああぁっ??!!」
 突然の怒号と、背中に感じた衝撃、どか、という衝突音。
 それを認識するのと同時に、ルフィはその場から吹っ飛んでいた。
 それこそ事故にあった瞬間と同じように。
 違うのは、今は吹っ飛ばされても地面に衝突することがないのでそう痛くはないし、怪我もしないという点か。
「う〜…なんだぁ?」
 何が起こったのか分からずに、そうぼやきながら体を起こす。
 と、目の前に誰かが立っていた。
 つま先からてっぺんまで、ルフィはゆっくりとその人物を見やる。
 黒い靴、黒いスーツ、黒いネクタイ。
 全身を黒で固めたいかにも胡散臭そうな格好とは裏腹に、髪は綺麗な金色、目は澄んだ海を思わせるような碧で。

「……てんし…?」
 あ、でも真っ黒な格好だから悪魔かも?
 金髪碧眼にぼけっと見惚れながら、ルフィは思わずそんなことを呟いていた。
 ルフィの呟きを聞き咎めたらしい金髪碧眼が、ルフィを見下ろしたままにやっと笑う。
「残念、どちらもハズレ」
「喋ったぁっ?!」
「さっきから何度も声かけてんだろが!」
 声を荒げた金髪碧眼の顔が怒りに歪む。
 ああ、勿体無い。せっかく天使みたいな綺麗な顔なのに。
 自分が怒鳴られているというのに、ルフィは場違いにもそんなことを考えてしまったりして。
 上の空のルフィに、自分の言葉が届いていないことに気付いた金髪碧眼は、小さく舌打ちする。

「どうでもいいけど、いつまでへたり込んでる気だ? そろそろ立てよ」
「あ、うん」
 乱暴な言葉。けれどその声音になんだか照れのようなものを感じ取り、自分を心配してくれたんだな、とルフィは気付く。
 言われるまま素直に立ち上がったルフィは、もう一度まじまじと金髪碧眼を凝視した。
「……何ジロジロ見てんだよ?」
「んー…とりあえず、俺、ルフィな。アンタ誰?」
 ルフィのその言葉に、金髪碧眼は驚いたようだった。
 愛嬌のある形をした眉が、ぴくりと上がり、目がわずかに見開かれる。
「お前さ、今の状況理解してっか?」
「一応は。俺、死んだんだろ?」
 言いながら見やった自分の体は、相変わらずぴくりとも動かない。
 まぁ俗に言う"魂が抜けた"状態なのだから当然と言えば当然なのだろうが。
 誰かが通報したのだろう、サイレンの音が遠くで鳴り響いていた。あれがここに到着するまで、そう間はないはずだ。

 ルフィは倒れた体を見下ろしていた目線を、金髪碧眼に向けて。
「そんで、結局、アンタ誰?」
 もう一度、同じ問いを繰り返したのだった。




◆言い訳◆
 またやってます、パラレルです。
しかも書いてる途中でノリノリになってしまい、2000文字越えたので前後編に急遽分けることになってしまいました。
ちうかNOVELSの天使ルフィネタも進んでないのに、また新しいことに手ぇ出してどうするよ自分。
……まぁこれはここだけで終わるし、元々ここのは書きたいことかたっぱしから書いてくネタ帳もどきみたいなもんだし、だから万事オッケイ!(人生舐めきっておりますな)
そういやサンジ君の名前が出ておりませんな。これほどまで登場しておきながら(笑)
ちなみにタイトル、またも思いつきと語感です。一昔前の少女漫画みたいなタイトルになっちまって失笑です。
でも自分の考えるタイトルって大体思いつきと語感なので、どれもこれも人様から見ると恥ずかしい代物なのかな〜…(汗)
とにもかくにも、続きは明日!!