日々徒然ときどきSS、のち散文
過去の日記カテゴリ別

2002/06/21(金)
SS・ワンピ]水面に揺れる月(ゾロナミゾロ)



 ホント、バカなんだから。

 アンタたちが不器用なことぐらい、知ってるわ。

 ねえ、だから、せめて、笑ってなさい。



  




「……おんなじよねぇ」
「あ?」
 夜、皆が寝静まった時間帯。
 ゾロとナミは、二人きりで酒を酌み交わしていた。
 示し合わせるわけでもなく、二人は時折こうして晩酌をする。
 この船の中でも酒豪として名高い二人。
 どちらの方が強いか、なんて勝負したことはないけれど(そんなことをしたら船に積んである酒をすべて飲み尽くしても足りないだろう)。
 同じくらい強い、ということは酒を酌み交わすには丁度イイわけで。
 ゾロとナミが、示し合わせるでもなくこうして真夜中の宴会を楽しむことは既に暗黙の了解となっていた。

「で、何がだ?」
 ナミの唐突な呟きに要領を得ないながらも、ゾロはそう聞き返していた。
 ナミが声に出して呟くのは、話したいもしくは聞いてもらいたいことだからだ。
 頭のいいナミは、自分自身で解決したいこと、できることは他人に見せたりしない。
 だから、そんなナミが声に出すことは聞き返してもいいという合図。
 問い返されたナミは、手にしていたグラスをぐっとあおった。
「よくさぁ、男と女の間には越えることのできない溝がある、なぁんて言うじゃない?」
 唐突と言えば唐突な話題に、ゾロは答えを返さずに片眉を上げた。
 けれどナミはそれに構わず話を続ける。
「でも、だからと言って同性間なら全て理解し合えるかって言ったら、それもまた違うわよね」
「…………まぁな」
「何、その不自然なまでの沈黙は」
「気にすんな」
 ナミは一瞬不機嫌そうに眉を寄せたが、すぐにふっと息を吐いた。

 もう一度グラスをあおって、中身は空になる。
 空になったグラスを爪で弾き、ナミはふと外に視線を向けた。
 丸い小さな窓。
 真夜中だというのに、外は薄明るい。
 今夜は、満月だった。
 雲一つない空で、月は何からも遮られることなく輝いていた。

「でも、やっぱりそれじゃ、おんなじなのよね」
「だから、何が」
「船長と料理人」
「…………」
 さらりと言われて、ゾロは思わず絶句する。
 酔ってんじゃねえのか実は、とも思ったが口には出さない。
「今日も派手に喧嘩してくれちゃってたわよね〜」
「随分楽しそうだな、お前……」
「オンナノコは大好きよ〜? そういう話題」
 オンナノコ、をわざわざ強調しながら、ナミは言う。

「……で?」
 結局何が言いたいんだ、とゾロが先を促すとナミはふっと苦笑して。
「人間関係ってのは、存外面倒なものよねって」
「そりゃそうだろ」
「否定しないのね?」
「自分の心ですら把握しきれねーんだから、当たり前じゃねえか?」
 言いながら酒をあおるゾロが、やけに男前に見えた。
「そぉねー…私、アンタのそういう男前なとこ、好きだわ」
「そりゃどうも」
 くすくす笑いながら、ナミはグラスに新たな酒を注ぐ。
 広がるアルコールの匂いに、ナミはわずかに目を細めた。
 気が付けば結構時間が経っているらしい。
 先ほどは小さな窓から見ることのできた月は、今はもう見ることができない。
 見えるのは、いつもよりも明るい外の景色だけだ。

「仲直りしたかしらね、いい加減」
「さぁな」
「いい迷惑よね、まったく」
「まぁな」
「ルフィはずっと膨れっ面だし、サンジ君は眉間に皺寄りっぱなしだし」
「そうだな」
「おいしいわね、このお酒」
「ああ」
「……キスしない?」

 何でもないことのように聞いて、けれど相手の返事を待たずにナミは立ち上がり。
 ゾロが何も言ってこないのをいいことに、掠めるように唇を重ねた。
 逃れようと思えば、振り払おうと思えば、そうできたはず。
 けれどゾロは、動かなかった。
 触れた唇は、思っていたより温かかった。
「酒臭い……お互い様か」
「これだけ飲めばな」
 指し示されたそこには、無残に転がる空き瓶たち。
「やば…明日、サンジ君が絶叫しそうだわ」
「させとけ。何とかするだろ、アイツなら」
「それもそうね」
 ゾロの言葉にナミは笑い。

 二人はグラスを、かちんと合わせた。





◆言い訳◆
 ぎゃーワケわっかんねえええ!!
ゾロナミゾロです、誰が何と言おうと。
切羽詰ってたので尻切れです。苦しい。
書き直したい度今まででナンバーワン。
なんか文体違う〜……