日々徒然ときどきSS、のち散文
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2002/06/07(金)
SS・ワンピ]本能(ナミとルフィ)



「なーナミ?」

「なあに?」

「キスしねー?」



本能



 そういう気分になったわけじゃ、決してなかった。
 そう切り出したのは、多分気まぐれにも近い気分からだったんだと思う。
 もしくは、俺がそう言ったらナミがどんな表情をするか、知りたかったとか。
 まあともかく、ロクな理由じゃなかったんだ。
 今にして思えば、俺はあの時脳味噌が沸騰でもしてたんじゃないかってぐらい。

 だってこの時はすでに俺はサンジと寝るのが当たり前になってたし(この場合の寝るってのは字面通りじゃねーぞ、勿論)、ナミがゾロとそーゆー関係だったこともちゃんと知ってた。
 ああでも、理由なんて後からいくらでも取りつけられるんだよな。
 実際あの時の俺は多分頭が真っ白だったし(まぁそれでも言われたナミの比じゃぁなかったと思うけどさ)、あの時はホントにしたかったんだ。


 ただ、

 キスが。


「悪い、なんでもね。気にすんな」
 長すぎる沈黙を破ったのは、俺の方だった。
 痛いほどの静寂に耐えられなくなったのは、と言うべきか。
 ナミが言われた言葉に沈黙で返すなんて、俺が知る限り見たことなかったから。
 俺の言った言葉はそれだけショーゲキ的だったんだな、と思った。
 ………
 まあ、そーだよな。
 俺だってナミに同じこと言われたら驚くだろうし(でもいーぞって言っちまう気もすっげーするな。だって減るもんでもねーし。…とか言ってたらサンジ辺りが拗ねそうだけどさ)。

「なんて顔してんの、アンタ」
 言われて、ナミが目の前に来ていることに気付いた。
「眉間に皺寄ってるわ」
 ナミの指が、俺の眉間にとん、と触れた。
 こーやってみると、やっぱりナミも女なんだなと実感する。
 細くて白い指。
 俺やウソップをよく拳骨で殴るのと同じ指だとは思えねー。
 ……どこからあんな力出てくんだろな。不思議だ…
 とかなんとか考えてたら。


「……何してんだ、ナミ」
「しっつれいね、こんな美人に抱き締められて出る言葉がそれ?」
 気付いたら、俺はナミに抱き締められてた。
 俺は椅子に座って(正確には椅子じゃなくて椅子代わりの樽だったけどな)ナミはその横に立ってる形だったから、俺はナミの胸辺りに丁度顔を埋める形になって。
 これ、サンジかゾロが見たら怒り狂うかもなー…
 とか何とか、どうでもいいようなことを考えてた。
 香水をつけてるわけでもないのに、ナミは何でかいい匂いがした。
「ていうかキスって言ったじゃん、俺」
 それともお前らの間ではこれがキスなのか? と失礼極まりないことを言ったら。
 頬をびよーんと伸ばされた。
「キスは駄目。アンタの欲しいのはそれじゃないでしょ」

 頭の上から降ってくる、声。
 ナミは言いながら、笑ってるみたいだった。
 何がおかしいのか分からなくて、俺は黙ってた。
 そしたらナミは、俺の頭をぐしゃぐしゃっと撫でて。
「カワイイとこあんじゃない、海賊王候補サン。今だけ、アンタのお母さんやってあげるわ」
 ……お母さん?
 何のことを言ってるのか、分からなかった。
 聞こうとして、でも言葉は出てこなかった。
 ナミの腕の中は存外暖かかったし、心地よかったから。
 それに加えて頭上からのナミの言葉や笑い声が、子守唄みたいで。
 俺は訪れる眠気に任せて、意識を手放した。




◆言い訳◆
 ルナミなんだかナミルなんだか(爆)
でもサンル、ゾロナミ前提な辺り私の書く話ですな。
タイトルが決まらなくてかなり困った…ちうか四苦八苦しました。
キス→回帰本能→LOVE FLIES→本能
ちなみにラルクの曲が入ってるのはこれ書きながらラルクのDVD見てたからです。今も横で流れております。ちうかディスク入れ換えるの面倒だったからそのまま流しっぱなし…

タイトルはナミの母性本能と、ルフィの回帰本能にも似た誰か(この場合母親っすね)甘えたいという思いと、両方を示しております。
アホですな。何が書きたいんじゃろうの……(謎)